ソーラーシェアリングは下の農地で作物を栽培しながら、太陽光発電を行うパネル、架台を設置します。
作物への影の影響を小さくするために、元々ソーラーシェアリングに使われる太陽光パネルは、従来のパネルより細型のものが多く見受けられました。現在でも、細型のパネルを用いたソーラーシェアリングを設置される農家さん、他社さんはもちろんいらっしゃいます。
ただ、弊社では細型のパネルだけでなく、産業用太陽光発電に使われる大きなパネルも扱っています。というより、大きなパネルを使った案件がほとんどです。
「なぜ大きなパネル?」「作物への影響は?」「国産?海外産?中国産?」など、皆さんいろいろ疑問があるかと思います。ここでは、弊社がソーラーシェアリングに大きなパネルを使う理由をご説明します。
目次
1.なぜ大きなパネルか
理由その① 投資効率
細型の小さいパネルは大きなパネルと比較した際、同じ発電容量を確保するには大きなパネルの2倍以上設置しなければなりません。しかし、細型パネルの価格が大きなパネルの半分以下かというと、そうではありません。むしろ、W単価で見ると大分割高です。
以下に例をご紹介します。
細型パネル
メーカー:アメリソーラー
出力:100W
型番:AS-5M18
寸法:1196*545*35mm
見積り価格:12,400円/枚
W単価:124円/W
大型パネル
メーカー:ハンファQセルズ
出力:285W
型番:Q.PLUS BFR-G4.1 285
寸法:1670*1000*32mm
見積り価格:23,400円/枚
W単価:82.10円/W
デルタ電子製5.5kWパワコンで、同程度の容量になるよう設計した場合、
アメリ:486枚(18直列3並列×9台) 48.60kW 6,0264,00円
Qセルズ:180枚(10直列2並列×9台) 51.30kW 4,212,000円
このように同程度の発電容量でも、アメリソーラーの方が200万円近くも割高です。
さらにQセルズのパネルは過積載にすれば、最大70kWを超えて設置でき、さらに投資効率は増しますが、
一方でアメリは、電圧と電流の関係でデルタ製パワコンではこれが精一杯の積載です。
というわけで投資効率の面を見ると、あきらかに大きなパネルの方が優位性を持っていることがわかります。
売電単価が年々下落している中、設備コストの削減は今後さらに求められるため、この金額の差は無視できません。
ちなみに、なぜ細型のパネルは割高なのでしょうか。
考えられるのは、用途が限定的で需要が少ないことで、生産過程でのスケールメリットが出せないため。
とか、通常のパネルとは違った生産ラインで製造するため。とかでしょうか。
理由その2 国産パネルは保証対象外
弊社のソーラーシェアリング案件は、1件を除きすべて海外産パネルを使用しています。
住宅用太陽光では、国産パネルを扱いますが、野立て、ソーラーシェアリング案件ではほとんどが海外産パネルです。この傾向は業界全体に言えることです。
国産パネルに対する需要、信頼の高さは既に太陽光をやっていらっしゃる方、これから取り組まれる方を問わず根強く、ソーラーシェアリングに国産パネルを使いたいと言われる方も相当数いらっしゃいます。
しかし、弊社が国産パネルをあまりオススメできないのは、ソーラーシェアリング案件では国産パネルの場合、メーカーの保証がおりない、という理由からです。
太陽光パネルには、出力と製品についてメーカーから保証されていますが、ソーラーシェアリングについてほとんどの国産メーカーが保証の対象外としています。
理由について「事例が少ない」こと、「地上高3mの位置に簡易な架台で設置することは想定していない」などが、メーカー担当者からの回答です。
出力保証と製品保証がなければ、パネルに異常があった際でもメーカーは何の対応もしてくれませんし、弊社でもその責を負うことは困難です。
一方、海外メーカーはソーラーシェアリングであっても住宅用、産業用と同じ保証内容を提供しているので、海外パネルを扱うことがほとんどとなっています。
しかし、弊社でも国産パネルを用いたソーラーシェアリングが1基ございます。
そのメーカーは、三菱電機です。
三菱は唯一他のメーカーとは違い、ソーラーシェアリングであっても担当営業所が案件ごと個別に判断するため、保証がおりる可能性があります。当案件でもメーカーから保証いただいております。
また、ソーラーフロンティアは最近ソーラーシェアリングに力を入れ始めているようなので、もしかしたら保証がおりるかもしれません。
ですので、国産パネルでのソーラーシェアリングをお考えなら、まず三菱とソーラーフロンティアで検討してみましょう。
余談ですが、国産パネルといえども、現在そのほとんどは中国、東南アジアなど海外に生産拠点を構えています。
「Designed by Apple in California Assembled in China」
これはiPhoneの裏面に記載されている文言ですが、iPhoneの企画・統制は本社のあるカリフォルニアで行い、製造は中国で行う。
国産パネルもこれと同じです。本社は日本でも、製造は海外で行う。
iPhoneを米国製か中国製かどうかなど気にしないように、大事なことはそのメーカーが信頼に足る、魅力的なメーカーかどうかです。「国産」という響きだけで製品を選ぶのは、時代の流れに取り残され、本質を見失ってしまう恐れがある危険な考え方ではないでしょうか。
2.作物への影響はないのか
当然ですが、細型パネルは面積が小さい分、下の農地や作物への影の影響は分散させられると考えられます。
細型パネルと大型パネルとで、同程度の発電容量を有する設備を設置した場合、細型パネル設備は大型パネル設備の2倍以上のパネル枚数が必要になりますが、それでも下部の農地に対するパネルの総面積は小さくなります。
よって、作物への影の影響を最大限考慮するならば、細型パネルの方が優れていると言えます。
ただ、大型パネルでも設計を工夫し、影の影響を極力分散させることはもちろん可能ですし、弊社案件では今年設置から4年目を迎える圃場がありますが、毎年の収量報告でも農水省から通達されている「周辺単収の8割維持」を問題なく達成しています。
また、スマートブルーの強みでもある「影のソフト」による下部農地への日射量シミュレーションで、設備の影が分散できているか、季節の移り変わりでどのように影の落ち方が変わってくるかなどを予測することができます。
これにより、大型パネルでも作物への影響を抑えることが可能です。
-細型パネルの優位性
大型パネル推しの弊社でも、細型パネルを使用した圃場があります。栽培している作物はブルーベリーです。
ブルーベリーのような果樹類はソーラーシェアリング下であっても、高さ2m以上にまで成長します。すると、上に成長すればするほど、大型パネルでは面積が大きいため、影の影響をもろに受けやすくなります。そのため、当圃場では細型のパネルを使用しています。
ブルーベリーだけでなく、同じ果樹類や背が高くなる作物には細型パネルの方が適していると考えています。
3.まとめ
当初、ソーラーシェアリングは細型パネルでスタートしましたが、弊社を始め、大型パネルを使ったソーラーシェアリングも増加してきています。
大型パネルの方がより投資効率は優れますが、作物への影の影響は無視できません。
影を分散させられるような設計かどうか、パネルとパネルの隙間はどれほど空いているか、導入する際の確認が肝心です。