再生可能エネルギー促進法案(以下:FIT法)を一部改正する法案が、8月31日に公布され同日施行されました。
今年4月にも大きな改正があったばかりで、発電事業者、設置業者の方々は情報が錯綜し、混乱されてはいないでしょうか。
今回はその8月末に施行された改正FIT法について、要点を絞り解説致します。
4月改正のポイントについては、こちらから。
変更申請関連
1.合計出力増減の制限
変更認定申請について、新たに「合計出力」の項目が追加されました。「合計出力」とは太陽光パネルの総出力のことで、発電出力とは別物です。
この合計出力の増減に係る変更申請について、以下のような制限が設けられました。
(1)認定合計出力を20%以上減少させる場合、単価はその変更認定が下りた年度の単価に改定
(2)認定合計出力を3kW以上または3%以上増加させる場合、同上
これら制限は稼働済み、稼働前を問わず、どの年度の単価案件にかかわらず、全ての設備対象です。
また、単価が変更されるのは追加分だけではなく、追加分を加えた認定取得済みの出力全てです。
今後変更申請をされる際は、くれぐれも良く計算し、何度も確認をして下さい。
特に影響が大きいのは(2)です。具体的な例を挙げてみます。
・稼働前設備のパターン
認定設備:270W×270枚=72.90kW
で認定を取っている設備があり、その後、パネルの出力アップで後継機の280Wで変更申請を出すとします。
変更申請:280W×270枚=75.60kW
この場合、2.7kWの合計出力増となり3kWの制限にはかかりませんが、
3.7%の増加となり3%の制限にかかるため、単価は改定されます。
どちらか一方の制限にかからなければ良いのではなく、3kWと3%のどちらの値にも未満である必要があります。
また、高単価で認定を取得している設備は、申請パネルが廃版となっていることもあるかと思います。
例え廃版であってもこの新基準は適用され、制限を逸脱するようなら単価は変わってしまいます。
対処法としては、
①パネル出力の増加幅が小さいものにする
②パネル枚数を減らす
があります。
270Wを280Wに変更する場合でも、パネル枚数を268枚に減らし合計出力を75.04kWにすることで、3%未満の出力増に抑えられます。
・稼働済み設備のパターン
今ではパワコン容量を超えてパネルを積載する過積載の考え方が、一般にも広く浸透していますが、
高単価時代に認定を取得し稼働している設備の中には、今の基準から見るとまだパネルを積載できる余力がある設備があります。
これまでは、そうした余力ある設備にパネルを追加する増設もよく行われていましたが、新基準によって実質的に効力のないものとなりました。
3kW分しか増設できませんから、追加する架台、ケーブルや工事費を考慮すると、増設することでのメリットはほぼありません。
いくら単価が高くても、3kWでは意味がありません。
誤解を生まないために、、過積載そのものが禁止されたわけではありません。
認定取得後の容量増が制限されただけですので、認定申請を出す段階での過積載は今まで通り何の問題もありません。
2.電力会社との契約再締結で単価変更
変更申請で単価変更となる可能性がある項目に、電力会社との再契約が明記されました。
電力会社と契約をし直す場合は、以下のようなことがらがあります。
(1)工事費負担金を支払わない
または出力制御ルールに基づく出力制御に応じない等の理由で、一度接続契約が解約になり、その後に再締結する
(2)事業者の申し出により、
・接続先の送電系統(ネットワーク)の変更(移設の場合を除く)
・新設アクセス線の施設方法の変更(架空線↔地中線)
・新設アクセス線の施設者の変更(申請者→一般送配電事業者)
があり、再接続検討がなされ、その後に再締結する場合
工事費負担金について、弊社は中部電力管轄案件が多いため中部電力を例にしますが、
工事費負担金の支払い期限は請求書発行から1ヶ月とされています。
では、この1ヶ月を過ぎたら契約が解約になるのかと言うと、そんなことはなく、
設備認定がまだ下りてこない等の事情を説明すれば、待ってくれます。
ですので、工事費負担金を支払わないからといって、すぐに電力会社との契約が解約されることはないのではと思います。
出力制御についても、弊社は該当地域での案件が少ないため、具体的な事情はわかりませんが、
工事費負担金同様、すぐに解約ということはなく、電力会社から連絡がくると思います。
その際に事情を説明し、理解してもらったらいいのだと思います。
3.申請・届出様式の変更
今回の改正に合わせ、新規の認定申請様式、変更認定申請様式、事前・事後変更届出様式が変更になりました。
変更認定申請で同時に変更できる項目が整理され、設置者やパネル型番、枚数、合計出力等の変更が一度にできるようになりました。
新様式となったことで、古い様式での紙申請は受け付けてもらえませんので、新様式に統一しましょう。
みなし認定関連
認定を取得しているみなし認定事業者(設備)は、9月末までに事業計画書の提出が必要ですが、
10kW未満太陽光発電のみ今年の12月末まで、提出期限が延長されました。
10kW以上太陽光は含みません。
申請時提出書類関連
申請時に提出する本人確認の書類が、戸籍謄本以外に、
住民票の写し、住民票記載事項証明書、戸籍抄本でも認められるようになりました。
書類要件は緩和されましたが、設置者様の代理で申請する場合は、
どの書類にしても設置者様にお願いしなければならないので、結局は同じことです。
以上が改正内容のポイントです。
大きいのはやはり合計出力アップの制限。変更する際は、何度も確認をするなどで、大事な資産をみすみす失わないようにお気をつけを。