経済産業省は10月4日に、非住宅用太陽光発電(10kW以上)の発電コストについて、2020年に14円/kWh(20万円/kW)、2030年に7円/kWh(10万円/kW)へと低減する目標案を発表しました。
住宅用(10kW未満)については、2019年に10年のFIT買取期間が終了する案件が多数発生することから、この時期を目途に家庭用電気料金の水準を目標に買取価格を引き下げていくとしています。
【目指すべき方向性(案)】
・FITからの自立を目指し、以下の水準を達成。
・非住宅用太陽光:2020年で発電コスト14円/kWh、2030年で発電コスト7円/kWh
・住宅用太陽光:2019年でFIT価格が家庭用電気料金並み、2020年以降、早期に売電価格が電力市場価格並み
こうした目標策定の背景には、欧州と比べた際の日本の高すぎる発電コストがあります。
モジュール・パワコンは1.7倍。工事費・架台等は2.1倍と、導入費用は欧州に比べ2倍の差があります。
なぜか。
経産省が今回発表した資料には、
・世界中に流通している同じ商品でも、日本では割高
・住宅用は過剰な流通構造で3倍の価格差が存在する
・太陽光発電専門の施工業者が少なく、工法等が最適化されていない
・日本特有の災害対応や土地環境による工事、架台費の増額
と説明されていますが、こうした課題が長年存在するにもかかわらず、真剣に是正に取り組んでこなかったことが要因でしょう。
欧州を始めとする世界各国では2010年代から、発電コストが低減され導入量も著しく伸びましたが、その契機となったのが2011年の東日本大震災です。
福島第一原発事故を目撃した世界各国は、原子力発電に見切りをつけ再生可能エネルギーに舵を切るわけですが、
当事者である日本においても事故後も、引き続き原子力を推進するのか再生可能エネルギーに転換するのかという議論が起きました。
しかし、原子力推進派の「再生可能エネルギーはコスト的に割高で、原子力発電を置換することはできない」
という短絡的で本質を指摘していない主張から、現在でも国のエネルギー政策に占める原子力発電のウェイトは大きく、再生可能エネルギーの構成比率はFIT後もさして変わっていません。
実際、当時の世界各国を見渡しても再生可能エネルギーの発電コストは原子力よりも割高でしたが、原発事故後の日本以外の国では再生可能エネルギーは急激にコストダウンし、原子力発電のコストを下回っている国も存在します。日本は大きな舵取りの機会を逸したと言わざるを得ません。
私は、「あんな重大な事故を起こしてもまだ原子力に頼って、しかもいまさら太陽光発電のコストが高すぎるからどうにかしようなんて・・・」と海外から冷笑されている気さえしています。
再生可能エネルギーの発電コスト低減は当然為されるべきです。
ただ、現時点では原子力発電の発電コストの方が低く、国が原子力発電をベース(ロード)電源に加えている以上、再生可能エネルギーの発電コスト低減は喫緊の課題ではなく、経産省の目標案通りに事が進むかは不明です。
太陽光発電の一販売業者である我々にできることは、良質なものを安く仕入れ、できるだけ安くお客様に提供する。そしてより付加価値が期待できる商品を開発すること。これに尽きます。
これからも再生可能エネルギーでの生活が日常になるために、日々努力して参ります。